難聴の放置と生活への影響
聴覚器官の衰えにより難しくなる言葉の聞き取り
言葉や音は耳で聞いている…。
そう私たちは認識していますが、もう少し詳しく言えば、鼓膜や耳小骨、蝸牛など、様々な器官の働きにより人は言葉や音を聞いています。
それらの器官の働きの衰えによって、一部の周波数を聞き取る感度が落ちたり、言葉の聞き取りが難しくなったりします。
難聴の進行により
低下する脳の言葉の理解力
言葉や音の情報は最終的に脳に届き、その「情報」が何であるかを脳が判断しています。
個人差はありますが、聴覚器官の衰えにより脳に届く「音声情報」が減少していくと、言葉を聞き分ける脳の働きも衰えます。
例えば「かきくけこ」と言っているのか、「たちつてと」と言っているのかの聞き分けも少しずつ難しくなっていきます。
難聴による人や社会との溝
難聴自体は、大きな声で話してもらう、繰り返してもらうといったように、周囲の人の行動で補えることも多く、ともすれば向き合わなくても済んでしまう問題として放置されがちです。
しかし、何度も大きな声で話したり、話が通じにくく誤解が生じたりすると、日常生活にも疲労を感じてしまうことになります。中には、家族や周囲の人とのやり取りを、笑顔で聞き流したり、回避してしまう人もいます。
一つひとつのやりとりは小さな日常の一場面ですが、これは認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で挙げられるところの「社会的参加」であり、難聴により支障が出ることは、決して小さな問題ではありません。
音という“心の糧” の大切さ
わずかな発声の中にある身近な人の様子や屋外の喧騒、鳥の声や虫の音など、それらはもし例え不要であったとしても、耳にすることで無意識に「季節感」や「情緒」などを感ることができる生活の刺激となります。
気が付かない、諦めるといった音声の聞き逃しが増えると、なんでもないように感じていた音がもたらしてくれていた「心の糧」が少なくなっていくことにも繋がります。
認知症・うつ病の危険因子としての難聴
人や社会、自然や環境との間に溝を作り社会的参加を減らさないよう、活発で健康的な生活を維持するために、難聴の問題と向き合うことはとても大切なことと言えます。
近年、世界および日本で、難聴と認知症、うつの関係などについて研究され、その発表が注目されています。
参考